2021年7月22日木曜日

Lesson 61. 動く家

海上の家

スペインのコスタデルソルのヨットハーバーには20億円クラスの豪華クルーザーが、100隻余り停泊しています。情報機器をすべて搭載し、レストラン機能を持つこれらのヨットは、動く家であり、オフィスなのです。英国船籍がほとんどのこれらの海の家は世界各地を航行しています。彼等のほとんどは、ライセンス事業のオーナーなのです。例えば日本のゴルフボールメーカーが、新しいデザインのゴルフボールをつくるとします。その際、デザインをスコットランドのエジンバラのセントアンドリュースにある英国ゴルフ協会に認定してもらう必要があります。更に、登録されれば、そのゴルフボールの売上の一部をロイヤリティとして、英国ゴルフ協会に支払わなければなりません。1600年から、7つの海を制して、植民地をつくりつづけてきた大英帝国は、今日も尚、その商業利権システムを酷使して、ライセンス事業を続けているのです。このようなライセンサー達は、クルーザーで世界のヨットハーバーを回りその地の市場をリサーチし、ビジネスパートナーを招いてもてなすという仕組みをもって事業を営んでいるのです。実は、世界中に点在するヨットハーバーや、そこの中心にある名門ヨットクラブのほとんどは、このようなライセンスビジネスの事務局の役割りも果たしているのです。西暦700年頃から、1000年間に渡って栄え続けてきた人口海上都市、ベネッツア共和国の男性達もその一生の大半を船という家の中ですごしました。人口わずか10万人の海上国家の成人男性のほとんどは、商業交流事業船の乗組員だったのです。タイタニック号が、SOSという信号を世界で初めて流したという事実があります。その悲劇のニュースは、一夜のうちに世界中に知れ渡り、SOSの電信機器は、世界中の政府や、企業に販売されたのです。そこでは、SOS電信機器事業の壮大なプロパガンダとしての事故というストーリーを描いてみてもおかしくはありません。豪華客船という家も、19世紀から20世紀の初めにかけての人々の夢をかきたてる空間でした。その中から、ルイ ヴィトンのバッグが生まれ、オリエンタルホテルの回廊も生まれたのです。香港にも、海上の家が多くありました。サンフランシスコのソーサリートにも、ヨットで暮らす人が多くいます。海という生命体を生み出した場に暮らすことによって、人間は生体のゆらぎを再発見し、その波のリズムと同調することによって絶妙の癒しを味わうことを求めてきました。シーサイドコテージを求める人々の想いにもそれは、現れています。この神の息としての海の呼吸のリズムを地上の家という空間に取り入れる工夫の中から、新鮮な癒しのノウハウが開発されるかもしれません。

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