2021年8月5日木曜日

Lesson 63. 文化の元型を編み込む美学と技 

 

 人類の営みの歴史性を物の形に織り込む術を知ることによって光の恵みは天から注がれるのです。私たちは今、人類の歴史の中の第五文化期にいます。第一亜人類期は、古代インド文化期です。第二はスペシャルメディア文化期です。第三はバビロニア、アッシリア、カルデア、エジプト、セム文化期です。第四はギリシャラテン文化期です。そして私たちは今、第五文化期にいるのです。この第一から第五までの人類の文化のアーキタイプ(元型)を把握し、それを形の中に織り込んで作りこまれた物とそれを用いて造られた空間には、光の恵みが訪れるのです。歴史の形の編集美学と技術が光のシャワーを呼び多くの人々に求められ、憧れをもたれる時空間となり又、作品となるのです。それを氣具というのです。日本の場合、その元型は縄文に求められるべきものなのですが、その記録はあまりにも乏しいのです。弥生文化期以後の都の歴史をひもとき、今日までの日本文化を分析してみますと、もう一つの特徴を観ることができます。北山文化の金閣寺性、東山文化の銀閣寺性、安土桃山時代の豪壮さと質素さの共存性そして、元禄時代の独創性、この4つの流れの中に日本人の消費性向が内包されているのです。金閣寺は、まさに人類が求めてやまない「金」という物質の象徴化です。消費行為としてみると、これはまさしくメジャーブランド志向です。誰もが認めるメジャー性をまず、手に入れようとするのです。次に、そのことを反省するような好みを見せるのがユニークなところです。日本人の反省会好きな元型があるような気がします。銀という質素で目立たない素材に注目し、光ではなく影の美に価値を見いだすのです。消費でいうとマイナーブランドへの興味です。現在のY'Sやコムデギャルソンといったブランドのブームは、この金閣寺好みの消費サイクルの中で大ヒットしたのです。次はいよいよ日本人の骨格頂である、折衷の妙の時代です。一方では狩野派のゴージャスな絵画があり、もう一方には利休のわびさびがあるようにというように相反した2つの好みを折衷し、ひとつのスタイルにするのです。ここで人々は、初めて組み合わせのおもしろさと個性への入り口を知ります。この傾向が現代です。いよいよ最後は、日本人が独創性を威敢なく発揮するスーパーエイジに入っていきます。これが元禄時代です。日本人の農家の二男、三男を、地代無料での開墾を認めるという特典によってスタートした江戸という壁地が、元禄という文化に初めて文化の灯をともしはじめたのです。水運を熟知したこの環境循環都市は、みるみるうちに成長していきます。世界で初めて軍縮をし、鎖国した日本は、日本そのものを世界とみなし人、モノ、金、情報が休みなく循環する仕組みを造りあげつつあった時代、それが元禄です。たった一丁の鉄砲からわずか10年で、何十万丁もの精巧な鉄砲を創りだしてしまった、日本という国に欧米列強は少なからず恐怖を感じました。そのリーダーシップをとりしきった信長という野望と世界観を備えた人材を生かしておく訳にはいかなかったのでしょう。また、信長はグレゴリオ暦を取り入れ、日本の歳事を全面的に変えようとしていたということにも、米国の策略家は心おだやかにしておけなかったのでしょう。北山、東山、安土桃山、元禄この4つの文化の流れにはブランド志向、マイナー志向、コーディネート志向、オリジナリティ志向と日本人の個人の物の買い方の特徴が現れています。文化とは、個人の細胞の記憶に蓄積されます。その結果、人々は無意識にその文化のプロセスを巡りながら生きるのです。この4つの日本文化性を、物や空間の形に濃縮して生かすことからも、氣具は生み出されるのです。










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