2021年9月16日木曜日

Lesson 69. 愛しの隠れ家

ブリコラージュとピエタテール

ブリコラージュは、仏語で、組み合わせの妙を意味します。フランスの人々は、家のインテリアを人にまかしません。自分の納得いく空間は、自分でつくり、居心地のいい物にしていくことから、人間らしい知恵が生まれると考えています。家の空間づくりを通して、人間性は磨かれると確信しているのです。空間を自分のテイストにできない、又、する感性を持ち合わす知恵を教育されていない人々は不幸です。動物的直感などは湧きようがありません。パリのセーヌ河の畔に、ベナシベという生活用具店があります。家の空間づくりの部品のすべてがあります。ここに、ドアノブのコーナーもあります。ありとあらゆるデザインと絵柄のドアノブが並んでいます。アパートメントのドアそのものは、木で統一されていてもノブに自分の味を出したいという欲求をブリコラージュ的マインドというのです。この考え方は、パリの人々の着装観にも現れています。彼等は、ブランド品でさえ、着こなしのパーツとして自分らしさの一部に溶かしこんでしまいます。すべての道具を、部品とみなし新しい使い方や組み合わせでオリジナリティをだそうとする工夫に喜びを見いだすこと、それを、ブリコラージュというのです。フランスでなぜ、このような精神が発達したのかというと、それは、この国の文化の背景の薄さが影響しています。ローマ帝国の影響、イスラム文化の作用、イタリアンルネッサンスの焼き直しとしての、フレンチルネッサンスから生まれたパリの文化、さらに、2000年位前に、パリを作ったのはフランス人ではなく、遠くスコットランドからやってきたケルト人だったということも、関係があります。ルーツを発見し、それを確立できず、常に底の浅さを見すかされるような想いを味わい続けてきたフランス人の人々にとって、折衷の妙の美学としてのブリコラージュのエスプリは彼等の誇りの軸を成しているのです。マンションの販売に、コーポラティブシステムという、個々が自由に内装を工夫する仕組みが導入されて人気になっています。日本人のブリコラージュ性の凄さを耕してから、これをすすめると、フランス人のそれを、しのいでいく可能性があるのです。もうひとつ、ピエタテールというスタイルがあります。これはアトリエを持つ暮らしのことです。家ともうひとつ、自分の創作空間を持つのです。脱日常的な時空間をもつ、もう一人の自分から発せられる、天のメッセージを形にしていくことから、智を生み出そうとすることは、21世紀を生きる人々にとって大切な作法となります。パリの人々は、このピエタテールをアトリエを持てない人々の為に、用意しました。それが、カフェです。あのカフェのあの椅子をわたしのピエタテールスペースに、と決めて、そこに通う若者達が、次のパリ文化を担っていくのです。小さくても、自分のオルタナティブな側面の空間化によって、心は浄化します。教会のミサも、そのための時空間です、誰にも知られない、もうひとつのクリエンティブなスペースの確保を2つの脳を持つ人間のノーマルな生き様として、つつみこむ世相が育っているのがパリなのです。そんな術によって世界中から滞在者を呼ぶ魅力が生まれるのです。

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